第4章 因縁の残火
斗亜も気づく。
「(左之助…何を見た?何を思い出した?)」
それでも左之助は、解き放たれた拳をぎゅっと握りしめたまま、ただ一点を見ていた。
「オイ! 剣心!!」
弥彦が怒鳴り、剣心はハッとして振り返る。
「あ…あぁ、すまぬ。何でござるか?」
「まだ話は終わっちゃいねーんだ。もう一つ、“危険なやつ”の話があんだよ!」
その言葉に操がピクッと跳ねた。
「この前は修行の邪魔しちゃ悪いと思って黙ってたんだけど…」
薫が溜め息をついて、付け足す。
「というか単に忘れてただけでしょ?」
弥彦は「ちげーよ!」と叫ぶが、誰も信じていない。
剣心と斗亜の表情が引き締まる。
左之助の拳も、自然と力が入る。
部屋の空気が、再び張り詰め始めた。
弥彦は一度ごくりと喉を鳴らし、その名前を告げようと口を開く。
「「蒼紫が京都に!?」」
剣心と左之助の声が重なった瞬間、操がバッと立ち上がった。
その顔は怒りと悲しみが混ざり、いつもの勝ち気な瞳とは違った。
「それだけじゃないわ!」
小さな手をぎゅっと握りしめ、絞り出すように言葉を吐き出す。
「元御頭、四乃森蒼紫は…“剣心を殺す”って一念で志々雄真実と手を組んだのよ。その結果、葵屋に危難を招いて…そして…爺やを半死半生にした…」
声が震える。
「もはや、あの男は…倒すべき 敵。そう…敵なのよ…!」
操の表情は悔しさで歪み、頬は涙で濡れていた。
剣心も斗亜も、返す言葉が見つからなかった。
「操…」
呼びかけようとした時だった。
ドタドタドタッ!!
「ん?」
ガラッ!!
「操ちゃん!!!…あっ、剣心さん!斗亜さん!!丁度いいわ!! みんな来て!! 早く!!」
お増、白尉、黒尉が血相を変えて駆け込んできた。
「ちょっ…」
有無を言わせず腕を掴まれ、左之助以外全員引きずられるように廊下へ出る。
「翁が意識を取り戻したの!!!」
その言葉が落ちた瞬間、全員の動きが止まった。
剣心・斗亜・操・薫・弥彦その目が一斉に大きく開かれる。
「随分と…心配かけたようじゃな…すまんな、皆の衆」
翁はまだ顔色が悪いが、顎ヒゲをいつものように小さくリボンで結い、ゆっくり上体を起こしていた。