第4章 因縁の残火
「すまんな、緋村君。本当なら最後まで力になりたいところじゃが…ワシにはまず、この葵屋と操を守る責務がある」
一拍置き、静かに続ける。
「青空殿に“君の気持ちをわかれ”などと言っておきながら、この有様じゃ。ふがいないが、これが今のワシの限界じゃ」
翁は二人を真っ直ぐ見据えた。
「だが気持ちは常に君たちの味方じゃ。操に葵屋の面々、それに青空一家…東京で別れた仲間もきっと、皆無事を祈っておる。それだけは、くれぐれも忘れんでくれ」
「絶対に忘れない」
「かたじけない」
斗亜と剣心は視線を交わし、揃って小さく笑う。
ビュオッ。
風を裂いて、剣心が一人の男の背後へと踏み込む。
だが刃が届くより先に、その男は軽々と宙へ跳んだ。
「一介の陶芸家に、いきなり斬りかかるとは随分無粋だな」
「“比古清十郎”は一介の陶芸家じゃないでしょう…」
「なんだ…お前らか」
「お久しぶりです…師匠」
剣心は逆刃刀を納め、深く頭を下げる。
「ひ、久し…ぶり…です…」
斗亜は視線を逸らしながら、気まずそうに呟いた。
「斗亜、お前…よくここに来られたな」
比古は斗亜の胸ぐらを掴み、今にも拳が飛びそうな圧を放つ。
「はは…俺も正直、今になって来るとは思ってなかったです~」
冷や汗を滲ませる斗亜に、比古は一瞬だけ睨みを効かせてから手を離した。
「まぁいい」
そう言って背を向け、家の中へと歩いていく。
「で?今さらノコノコ現れて、この俺に何の用だ」
「俺は別に用なんて…」
ぶつぶつ言いながら、斗亜は落ち着きなく視線を泳がせる。
「“新津覚之進”といえば、陶芸界じゃちょっとした注目株だそうですね。どうして陶芸に?」
「別に陶芸でなくても構わん。煩わしい人付き合いを避けるなら、芸術家が一番手っ取り早い」
「随分あっさり言いますね」
「真の才能というのは、何をやらせても形にするものさ」
ぴしっ。
「あ…」
斗亜の手元で、比古の作品に小さなひびが入った。