第4章 因縁の残火
二日目の朝。
斗亜は早くに目を覚ました。
工房の奥から、金属を叩く音がする。
カン…カン…。
静かで、一定のリズム。
覗くと、新堂が一人、作業台に向かっていた。
「まさ?…何してんだ」
「見りゃわかるだろ」
新堂は手を止めない。
「新しい蒼雲の下拵えだ」
「二週間かかるんじゃなかったのか?」
「修復はな。新しいのは俺が納得するまで時間が更にかかる」
ちらりと斗亜を見る。
「だが…お前が戻ってくる時のために、新しい蒼雲の準備くらいは出来る」
斗亜は何も言えなくなった。
昼前。
斗亜は思い出が詰まりすぎてる蒼雲を腰に差した。
「行くのか?」
「あぁ…」
「死ぬなよ」
「努力する」
斗亜は立ち上がり、少し迷ってから頭を下げた。
「世話になった」
「ガラじゃねぇな」
「一応、大人になったんでな」
新堂は鼻で笑った。
「次来る時は…」
一拍置いて。
「新しい蒼雲を迎えに来い」
斗亜は振り返り、笑った。
「おう!約束な」
戸が閉まり、足音が遠ざかる。
「死ぬんじゃねぇぞ、斗亜…」
新堂はしばらく立ち尽くし、ぽつりと呟いた。
新堂の工房を出て、しばらく歩いたところで足が止まった。
嫌な気配に、斗亜は小さく舌打ちして空を見上げる。
狼煙が上がっていた。
「げっ…もう見つかったのかよ…」
大きくため息を吐き、重い足取りで葵屋へと向かった。
「“比古清十郎”の在所じゃ」
翁から差し出された文を、剣心は静かに受け取る。
「まさか“比古清十郎”が隠し名とは思わなんだから、探すのに骨が折れたそうじゃ」
「あ…すまんでござる。つい自分の感覚で過ごしていたから…」
剣心は一度頭を下げ、続けて言葉を添える。
「詫びついでと言ってはなんでござるが…最後に操殿と蒼紫の件、よろしく頼むでござる」
「任せとけ!ワシが必ずなんとかする!」
翁は自分の胸を、どんと叩いた。
「では…」
斗亜と剣心が踵を返そうとした、その背に翁の声がかかる。