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緋色の誓い

第4章 因縁の残火


「なぁ、まさ」

「なんだ」

「俺さ…」

一瞬、言葉に詰まる。

「京都に来てから…ずっと迷ってる」

新堂は答えない。

だが、耳は確実にこちらを向いている。

「もう人は斬らないって決めた」

「……」

「でも、斬らなきゃ止められない相手がいる」

火がぱちりと鳴る。

「それで…また人斬りに戻っちまったら…」

斗亜は自分の手を見る。

「俺…またあの時の顔で人を殺す気がしてさ」

新堂はため息をついた。

「昔のお前なら迷わなかったな」

「だろ?あの時は斬らなきゃいけなかった…迷う暇もない」

斗亜は苦く笑う。

「だから困ってんだよ」

しばらく沈黙が落ちる。

やがて新堂は、ぽつりと言った。

「俺の嫁な」

「ん?」

「刀が嫌いだった」

意外な言葉に、斗亜は顔を上げる。

「鍛冶場に入るたびに言われた“また血の匂いがする”ってな」

新堂は火を見つめたまま続ける。

「俺は刀匠だって言い返した。血なんか付けてねぇって」

短く笑う。

「でもな…今ならわかる。刀は、持つ奴の覚悟を写す」

斗亜は黙って聞いていた。

「斬る覚悟の奴が持てば殺す刀になる。守る覚悟の奴が持てば…そのための刃になる」

新堂はようやく斗亜を見る。

「蒼雲を預けた時のお前は、斬る覚悟だった」

「……」

「だが、今のお前は違うさ」

断言だった。

「だから蒼雲を持てねぇんだろ」

斗亜はゆっくり頷く。

「…桜がさ」

声が少しだけ揺れる。

「俺の血だらけの手を握って笑ったんだ。それが…忘れられねぇ」

新堂は目を伏せた。

「なら…答えは出てる。刀を持つな、とは言わねぇ。だが…斬るためだけに振るうな」

斗亜は鼻で息を吐く。

「難題出すなぁ」

「人斬りだったガキにゃ丁度いい」

しばし、無言になる。

「っていうか!!!」

唐突に声を張り上げた斗亜に、新堂は火箸を持つ手を止めた。

「まさ嫁居たの!?初耳なんだけど!!」

「…声でけぇ」

「だって聞いてないし!!いつ!!?どこで!!?」

新堂は面倒くさそうに鼻で息を吐く。
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