第4章 因縁の残火
「お前…そんな使い方してんだ!?」
斗亜は頭をぽりぽりと掻く。
「ちょっと…新井赤空の殺人剣でバーンって…」
「新井赤空だとっ!?」
新堂の怒号が工房中に響き渡った。
「あ、知ってんだ」
「知ってるに決まってんるだろ!!刀匠やってる奴に知らねぇ奴は居ねぇ!」
折れ口をジッと見つめ、歯を噛み締める。
「さすが新井赤空だ…」
職人の目だった。
「蒼雲さ…二、三日で直してくんない?」
無茶なお願いを斗亜が言う。
「二、三日で直るかボケェ!!」
新堂の怒号が飛ぶ。
「刀舐めてんのか!?蒼雲だぞ!?それも真っ二つだ!!」
「え~…昔は、もっと無茶聞いてくれたじゃん」
「何年前の話してんだ!!お前が人斬り時代の話を持ち出すな!!」
新堂は額に青筋を浮かべ、斗亜の胸倉を掴み上げた。
「無能…」
斗亜が、ぼそっと呟いた瞬間。
ガッ!!
斗亜の胸倉を掴んだまま、壁に叩きつけられる。
「蒼雲・鎮を何だと思ってる!?俺の自信作だ!!」
「いででで!!!ご、ごめんって!!まさ落ち着けって!!」
新堂は斗亜を鋭く睨みつける。
「てめぇ…」
やがて手を離して、荒く息を吐いた。
「斗亜…お前、なんでそんなに早く蒼雲を直してほしい?」
斗亜は視線を外す。
「過去の…人斬り時代の因縁に、決着をつけるためだ」
「何…?俺に勝手に預けていった蒼雲じゃダメなのか?」
新堂の声は荒くない。
だが、逃げを許さない重さがあった。
斗亜は視線を落とす。
無意識に拳を握る。
「あれを持つと…人斬り時代に戻りそうで…」
胸の奥で、あの日の声が蘇る。
――もう…人を殺めるのはやめて…たくさんの困っている人を…助けてあげてそして…新時代に…生きて…――
「…あれで、もう人は斬りたくない。それに…蒼雲で作った因縁だ…」
新堂は、ゆっくりと息を吐いた。
「…元人斬りのガキのくせに」
吐き捨てるようでいて、どこか苦い。