第4章 因縁の残火
「受け取ってください、緋村さん。父もきっと、それを望んでいます」
剣心は逆刃刀を見つめ、静かに過去を思い返す。
志士を抜けた、あの日の記憶。
そして、折れた逆刃刀の重さ。
「それは兄貴の刀だ。有り難く受け取れよ」
「赤空殿…逆刃刀・真打…ありがたく頂戴致す」
そっと刃に手を添え、斗亜を見る。
翌日。
「葵屋を出る――――!!!?なんで!!?緋村弟の怪我も治ってないし!!新しい逆刃刀が手に入って、これからって時に!!!!!」
操の声が天井を突き抜ける勢いで響いた。
勢い余って、剣心に頭突きを食らわせた。
「落ち着けって…」
斗亜が顔を引きつらせながら言う。
剣心がよろける。
「理由を聞かせてもらえんかな、緋村君」
翁が静かに問う。
声は穏やかだが、目は真っ直ぐだった。
「「……」」
剣心と斗亜は、揃って口を閉ざしたままだった。
「言えないっての!?ちょっと!!」
操が食い下がる。
けれど二人は沈黙を崩さない。
「お前は引っ込んでなさい…」
翁がため息をつき、操を奥へ押し戻す。
そしてわざとらしく咳払いした。
「話す気はないか…所詮は他人同士。心の内まで語る義理はないということか…ならば、出て行く前にここ十日分の滞在費を精算してもらおうかの。一人七円五十銭じゃ」
ピシッ。
その言葉が刺さった瞬間、剣心と斗亜はまるで石になったかのように固まった。
「葵屋は料亭兼旅館。他人をタダで泊める道理はないからのう」
「いいぞ!爺や!!」
操が腕をぶんぶん振って応援する。
翁はため息混じりに続けた。
「話してくれんか?でないとワシは納得できても、この子はそうはいかん…」
沈黙がほどける。
斗亜が先に、唇を噛んで言った。
「このままでは皆を巻き込むことになる…俺は誰も傷つけぬよう、人と距離を置いて生きてきた…兄貴は誰一人巻き込まぬよう、東京を出た」
「だが、今回の件で青空一家を巻き込んでしまった…。このままここに留まれば、いずれ葵屋にも同じ危険が及ぶでござる」
剣心も、静かに重ねる。