第4章 因縁の残火
そして斗亜は、柄頭を振り抜き、張の額へ叩き込んだ。
ガッ!!
鈍い音。
張の頭が揺れる。
「よっしゃあ!!」
操が思わず声を上げる。
だが翁は表情を崩さず、戦況を見据えたまま言った。
「…この闘い、長引きそうじゃな…」
剣心の声が低く落ちる。
「そうでござるな…」
張は距離を取り、歪んだ笑みを浮かべる。
「危なっ…やっぱあんた、油断したらアカンわ」
額を押さえ、血の気を引かせた目で斗亜を見る。
「今の一撃で頭に上った血が一気に冷えたで。もう二度とその間合いには入らへん」
薄刃が、ひらりと揺れる。
「外から刻んで、五体解体して四条河原に晒したるわ」
張が薄刃乃太刀を一閃。
斗亜は正面から受け止める。
その瞬間だった。
キィィィィン。
嫌な音が響く。
斗亜の刀が、兄の逆刃刀と同じように…無残にも真っ二つに折れた。
「なにッ…!?」
斗亜の呼吸が一拍、止まる。
青空が叫ぶ。
「緋村さん!!父の最期の一振りです!!これを使ってください!!」
赤空最後の刀が、宙を舞う。
パシッ。
斗亜がそれを受け取った瞬間、息を呑んだ。
重みが、違う。
冷たさが、違う。
そして何より、“抜かれていない刀の静けさ”が、手のひらに伝わってきた。
「抜けや。ええ加減ケリつけよや。真剣同士、殺るか殺られるか、分かりやすうてええやろ」
張は薄刃乃太刀をゆるく揺らし、獲物を弄ぶみたいに笑った。
その目だけが、冗談じゃない光をしている。
「行け!!斗亜!!刀さえあれば勝機はある!!」
操の叫び声が響く。
斗亜は柄を握りしめた。
柄を引けば、刀身は姿を現す。
だが、なかなか動けない。
脳裏に蘇る。
血飛沫。
断末魔。
人を斬った感触。
握るたびに手へ伝わった命の重み。
『もう…人を殺めるのはやめて…たくさんの困っている人を…助けてあげて…そして…新時代に…生きて…』
桜の最期の願いが、耳の奥で静かに響く。
「くっ…!」
「いや…」
斗亜の葛藤する姿を見て、剣心が静かに呟くと皆の視線が剣心に向く。