第28章 選んだ未来
そんなことがありつつも、三人はなんだかんだ共に生活をしていた。
ある日、街の場末の食事処で昼から酒を飲みつまんでいると。
ヴィレイニは窓の外を見て、急に席を立った。
「あー。ちょっと小便いってくるわ」
「んなこと言って師匠、また俺に払わせる気か?」
「うっせえな。気をつけろよ」
「は?」
肩肘をついて飯を食べているセロをちらっと見下ろし、めずらしく肩に手を置く。
それが師との数年間の別れとも知らず、セロはぼやいていた。
ナザルは飲食しないため、脚を組んで新聞を広げていた。
すると窓の外に、紫髪の女の影を見かける。
白肌に黒いローブをかぶった女は綺麗な顔をしていたが、ナザルはすぐに、それが人間ではないと気づいた。
「おいセロ、行くぞ」
「……はぁっ? まだ食ってねえよ!」
「いいから来い!」
怒鳴られて顔をしかめ、腕を引っ張られるように立ち上がる。
同時に、窓がバリンッ!と大きな音を出して壊れた。
店の者は襲撃だと恐れ全員が逃げていく。
外からは、不気味に冷ややかな顔つきをした魔術師の女がいた。
セロ達に手をかざし、そこから炎を舞い上がらせる。
「なっ、なんだよあいつ! 師匠の敵か!? だから逃げたのか!?」
「そんなもんだ!」
ナザルはセロと一緒に全速力で駆けていく。
近くの森に隠れ、敵に見つからないようにするも、相手はヴィレイニと張るぐらいの実力者だった。
結局その紫髪の女に追い詰められ、セロは魔術で生成された底なし沼に落とされたところをナザルに間一髪で救われる。
「や、やめろ、あんたなんなんだ! 俺は関係ねえ!」
緑の湿った液体にまみれ、息をぜえぜえと吐きながら、セロは逃げ出そうとする。
「お前の師はどこだ。これ以上閣下に迷惑をかけるな。早く差し出せ」
「……何言ってんだよぉ! 知らねえよ! 俺らだって置き去りにされたんだ!!」
そう叫んだとき、セロの心にぽっかりと穴が開いた。
ナザルも、セロを守りながらこの女とサシで戦う場合のリスクを考え、降参して息をつく。
「では魔界に来い。お前達があの男の補填をしろ」
「ひっ……なんで俺達が……魔界なんて行きたくねえよ! 殺されちまう! 俺は弱いんだ!」
「殺しはしない。しばしの間の、人質だ」
紫髪の女は、魔術師特有のにやりとした顔つきで、彼らのその後を確定させた。
