第28章 選んだ未来
だが八年の歳月が流れ、純朴少年だったセロの姿は変貌していた。
彼は師の不在時に、アジトでぶつぶつ言いながら違法植物の栽培をしている。
「……あんのクソジジイ……また請求書何度も俺に送ってきやがって……俺ができないレベルの依頼も強制的にやらせてくるしよ……くそっ……」
「おい、セロ。俺が注文した服どこだよ?」
「……ナザル。その棚にしまっただろ! 管理ぐらい自分でやれよ! 俺はお前らの家政夫じゃねえんだよ!」
赤髪の獣は好戦的な瞳で、平凡な青年を見下ろす。
この二人は当初からそりが悪かった。
「ピリピリすんなよ。戦闘でいつも助けてやってんの誰だ?」
「くっ……依頼完成させてお前に服買ってやってんの誰だよ!」
「それは俺の取り分だ。文句あんならあのおっさんに言えよ。お前だって、いいようにこき使われてるが、術教えてもらってる手前結局離れられねえんだろ?」
上から目線で言われ、セロは苛立ちまじりに舌打ちする。
「それだけじゃねえよ。師匠はクズだが、魔術師としてはピカ一だ。だから俺は我慢してんだ。豪胆な性格だって、悪いことだけじゃねえしな。この前だって、結局依頼の尻ぬぐいはしてくれたし」
言い訳するセロにナザルは呆れて笑う。
「⋯獣のお前には分かんねえよ、あの人の危ない魅力はな」
「別に分かりたくもねえ。……俺は利点があるからヴィレイニといるだけだ」
セロは怪訝な目を向けた。
「ナザル、お前って……師匠と魔界で仲間になったんだよな。なんで人間界なんかにいるんだ?」
「あ? そりゃ人間の女のほうが可愛いからに決まってんだろ。……モテねえお前には分かんねえか」
「うるせえ!!」
二人はいつものように言い合いが止まらなかった。