第28章 選んだ未来
それから二人は人間界に逃げてきた。
赤髪の獣はヴィレイニの古代式魔術により、肉体を自由に変化できる幻獣に生まれ変わった。
男二人、自分の欲望さながらに進む生活の中で、八年が経過する。
そんなとき、天才魔術師ヴィレイニの噂を聞きつけた十六歳の少年が現れた。
女性たちが入り乱れるパブの特別ルームで、土下座をしている。
「へえ~。弟子になりたい、ねえ」
「はい! あなた様が俺の村で、いとも簡単に魔物数十匹を倒してくれたおかげで、皆の命も農作物も救われました! そんな大英雄の姿に憧れを持ったんです!」
「そんなことあったっけ? 全然覚えてねえわ。たぶん俺の道の邪魔になってただけだろ。……んでお前、俺のために何が出来んだ? 弟子ってのはな、未来永劫師匠に役立つために存在するんだよ」
「もちろんです! 俺は本の虫で知識だけは負けません! 薬オタクでもあります! 植物とキノコの見分けも得意です!」
「おーいいじゃねえか、陰気臭えけど。俺は悪いけど体育会系だから。ついてこれねえなら切る。わかったか」
「はい!」
「おし。じゃあとにかく魔術を使って稼げ。6割は俺に上納しろ。商売の成果次第で術をひとつずつ教えてやる。講習料やすいもんだろ」
「……ありがとうございます!! がんばります!」
セロは涙ながらに感謝し、その日からほぼ奴隷生活が始まった。
ナザルは自分を使役する魔術師の弟子になったセロのことを、冷ややかに見ていた。
頭は良さそうでも見るからに軟弱で素直で、どんくさそうに映ったからだ。