第28章 選んだ未来
突如現れた金髪の男は、さながら魔剣士のようだった。
突き刺した剣を抜き、ゼイランの喉元に突きつける。
「お綺麗な面の貴族さんよぉ、ずいぶん落ち着いてんじゃねえか。奇襲は珍しいだろ?」
鎧の男はマントをはためかせ、嘲るように顔を近づける。
ゼイランは顔つきを変えず、銀色の瞳だけを男にじろりと向けた。
ルドガーとジュリスが前に出ようとするも、手を上げて制止した。
「いい。お前達は動くな。俺がやる」
そう言って剣をそっと指で押しのけた。
魔剣士はにやにやしながら、反抗もせず、ゼイランが立ち上がるのを許した。
細身と頑強で体格は違うものの、対峙した二人は同じぐらい背が高い。
「お前、どうやってこの敷地に入った? 人間のくせに……相当腕のある魔術師だな」
「ハッ。腑抜けの魔族どもなんざ俺の敵じゃねえ。俺はな、お前の頭を狙って何年も潜伏してきたんだよ!」
苛立つ男は中年ではあるが、顔立ちは整っている美男子だ。
男達全員が殺気立つ重苦しい空気に、入ってはいけないと思いつつ、あなたはどうしても気になってしまった。
「ゼイラン様。……この人に何かしたんですか?」
「さあな。こんなやつ、覚えていない」
聞かないほうがよかったのだろう。
あっけらかんと言い放った瞬間、魔剣士はぶち切れた。
「なんだとてめえ、俺の顔を覚えてねえっつうのかッ!!」
そう叫んで拳を振りかぶろうとした瞬間、異常事態が起きた。
ゼイランがその場に、完全に停止した。
彼だけでなく、周りを取り囲んでいたルドガーやジュリスも、瞬き一つなく微動だにしない。
そしてそばにいたナザルも。
「……はっはっは! 上達したじゃねえかバカ弟子!」
「も~っ、ふざけんなよ師匠! なんであんたいきなりアホみたいな登場の仕方してんだよ!」
使用人たちもすべての動きを止めて固まっているテラスのパーティー会場。
そこでなぜか、乱入してきた魔剣士と、仲間のセロだけが喋っている。