第27章 護るということ
「私はな、人の血は長いこと飲んでおらん。だから怖がらなくてよい。普段何を食しているかは……お前のために教えないでおこう」
「ええっ! でも、お酒とかお茶飲んでますよね? もし私がケーキ作ったら、食べれますか?」
あなたの素朴な疑問に、ネメニアだけでなく、隣のルドガーも笑みをこぼす。
「…そんなに失礼だったかな?」
「いや、いいんじゃないか。悪くない質問だ。ちなみに俺は食う」
「私もひとつもらおう。ゼイラン、君はどうだ」
「ええ……いただきます。は腕がいいんですよ⋯」
がくりと諦めたように、公爵は肩を落とす。
ネメニアは、若い者達のやり取りを、ただ優し気な瞳で眺めている。
彼女からすれば、それは遠い昔にあった思い出に似た景色だった。
「この子の前では、皆が素になれる。それでいいのではないかな」
「そうですね……貴方にお許しいただけるのであれば」
ゼイランはあなたと、そして自由気ままなルドガーを見て、ようやく安堵の息を吐いた。
しかし彼もここへ来た理由が分かっている。だからまっすぐと正面のネメニアに、こう告げた。
「ヴェルガロン様。今回私共を呼ばれたのは、やはりに授ける加護の件でしょうか」
そうはっきりとうかがうと、ネメニアも表情がすっと変化した。
場の空気が一瞬で静まり、緊張感が走る。
和やかな雰囲気は嘘ではない。
だが、これもまた、彼女が真剣に望むことなのである。
「そうだ。この話は避けては通れん。率直に問おう。――よ。お前の口から、どちらの加護を求めるのか。聞かせてくれ」
急に訪れた究極の選択に、あなたが飲んでいた紅茶の手が止まる。
もう明るく笑える状況ではなく、三人の緊迫した様子が伝わってきた。