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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所



「さよなら……ラビ」

無表情のまま自分を見下ろすティファの姿だけが、やけに鮮明に焼き付いていた。


膝が、水面へ沈む。
胸を貫く痛みも、もう遠い。

力が抜けていく。


意識が、暗い水の底へ引きずり込まれていく。


ああ。
ここで、終わるのか。

ブックマンに戻ることもなく。

ティファのもとへ帰ることもなく。

ただ、こんな夢の底で。



“お前はもう、いらねぇよ”

もう一人の自分の声が、遠くで嗤う。


その声に、抗う力すら残っていない。

ラビの瞼が、ゆっくりと落ちていく。

――その時だった。


『行ってらっしゃい』


ふいに。

沈みかけた意識の底へ、別の声が滑り込んできた。


責める声じゃない。
縋る声でもない。

笑っていた。


いつもみたいに、少しだけ照れたみたいに。
それでも、真っ直ぐに。


『帰ってきてね』

ラビの指先が、僅かに震えた。


……違う。

落ちていく意識の、その一番底で。
ぐらりと、何かが引っかかる。


ティファは。

“さよなら”なんて、言わない。

“信じてたのに”なんて、縛らない。


あいつは。

怖いくせに。
引き留めたいくせに。

それでも最後には、笑って背中を押す。


ラビは、重い瞼を、無理やり押し上げた。
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