第41章 【第三十六話】記録者の帰る場所
「――させるかよ!」
ラビが鉄槌を、アレンが神ノ道化を伸ばす。
二人が間に割って入り、辛うじて受け止めた。
けれど、それでも足りなかった。
満身創痍の二人と、目覚めたばかりのイノセンス。暴走した化け物には、遠く及ばない。
ティキが、ゆっくりと腕を振り上げた。
ふいに、音が、遠のいた。
ただ、ラビの荒い呼吸だけが、やけに大きい。
崩れゆく塔。
傷だらけのラビとアレン。
瓦礫を支えるチャオジー。
黒い帯に絡め取られ、身動きの取れないリナリー。
振り上げられた腕が、影を落とす。
誰も、この絶望を、覆せない。
そう、思った瞬間だった。
その直後。足元の石畳が、低く軋んだ。
「……っ、何だ!?」
チャオジーが、青ざめた顔で足元を見る。
白い床へ、十字架を描くような紋様が、音もなく浮かび上がっていく。
それは淡い光を帯びながら広がり、暴走するティキと、追い詰められたアレンたちの間へ、割り込むように形を成していった。
次の瞬間。
紋様の中心が、ゆっくりと沈み込んだ。
底の見えない穴が、口を開ける。
冷たい空気が、一気に吹き上がった。
その奥から――黒い影が、せり上がってくる。
音もなく。
現れたのは、無数の鎖に巻かれた、柱のような棺だった。