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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第40章 【第三十五話】インクの檻



「やめろ……覗くな……ッ!」


叫んだ瞬間、周囲の気配が消えた。

静寂。
浅い水場。

立っているのは、ラビ一人だけ。


パシャ、と小さな音がした。

視線を落とす。

一枚のトランプが、水面に浮かんでいた。


「……僕の落とし物」

拾い上げたのは、別の手だった。

白い手。

その持ち主を見た瞬間、ラビの呼吸が止まる。


「アレ――」

アレン。

そう呼ぶより早く。

パンッ、と乾いた音が響いた。


「――ッ!!」

アレンの顔が、横から現れた手によって吹き飛ばされる。


水の中へ崩れ落ちる身体。
首から溢れる赤が、水面をじわじわ染めていく。

その隣に立っていたのは――もう一人のラビ。


「何その反応?」

薄く笑う。


「こんなの、ただのインクの塊じゃん」
「っ……は……」

「これすら黙って見てられねぇなら、お前もう駄目だな」

ゆっくりと近づいてくる。



「失格だ」

息が上がる。


違う。
これは幻だ。

本物じゃない。


分かってる。

なのに。

水の中に沈むアレンの姿と、ティファの笑顔が頭の中で重なる。


『ラビ』

呼ぶ声。

温度。
触れた指先。


『帰ってきて』

胸の奥が、激しく軋んだ。
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