第40章 【第三十五話】インクの檻
その後ろで、教団の仲間達もゆっくり近づいてくる。
「仲間じゃなかったの……?」
「ラビ……」
「ラビィ……」
やめろ。
その顔で。
その声で。
そんなことを言うな。
特に――ティファの姿で。
「私達は紙の上のインクなんかじゃないッ!!」
叫びと同時に、全員が一斉に襲いかかってくる。
ラビは咄嗟に近くのナイフを掴み、構えた。
分かっている。
これは幻だ。
ロードが作った夢だ。
なのに。
目の前の“ティファ”だけが、どうしても斬れなかった。
「生き抜く術は叩き込んである」
ブックマンの声が、頭の奥に重く響く。
「薙ぎ払え、ラビ」
「ッ……!」
ラビは強く目を閉じた。
視覚は駄目だ。
ここでは、見たもの全てが心を抉ってくる。
だから切り捨てる。
気配だけを拾え。
呼吸だけを読め。
近づいてくる殺気を、反射で弾き飛ばせ。
「ぎゃあ!」
「ぐぁっ!」
「ラビィッ!!」
悲鳴が響く。
知っている声だった。
リナリー。
ジョニー。
科学班。
教団の仲間達。
耳に入る度に、胸の奥が嫌なふうに軋む。
それでもラビは目を開けない。
右から来た気配を蹴り上げる。
左から伸びた腕を払う。
正面へ踏み込んできた影の顎を砕く。