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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第40章 【第三十五話】インクの檻



その名前を聞いた瞬間。

頭の奥で、何かが鋭く鳴った。


キィン――。

意識が一瞬、現実へ引き戻される。


違う。

黒の教団。

アレン。
リナリー。

ティファ。

オレ達は今、ノアの方舟にいたはずだ。

ロードの夢世界に引きずり込まれて――。


「……っ」

ラビは勢いよく立ち上がった。

小舟が大きく揺れる。

ブックマンが怪訝そうに眉を寄せた。


「どうした、ラビ」

違う。

目の前のこいつは本物じゃない。

癪なくらい、オレの知ってるジジイそのものだ。

だからこそ分かる。


「……オレの記憶、読みやがったな」

ロード。

あのノア。

オレの頭ん中、勝手に覗きやがって。


ラビはゆっくり息を吐きながら、周囲を睨んだ。

落ち着け。

整理しろ。

ここは現実じゃない。


「よくできてら……ッ」

吐き捨てた瞬間、別の声がした。


「“戻る”? 何処へ?」

ブックマンの隣。

いつの間に現れたのか、もう一人の“ラビ”が小舟の縁に腰掛けていた。

ラビは目を細める。


「……出やがったな」

そいつは笑わない。

ただ静かに、こちらを見ている。


「“ラビ”が何処へ戻れるっていうんさ?」

淡々とした声。


「ブックマンの跡継ぎとして、何処にも心を移さずに生きてきたお前に、戻る場所なんてあるわけないだろ」
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