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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第40章 【第三十五話】インクの檻



耳元じゃない。
頭の内側へ直接響く、甘く歪んだ声。

ラビの呼吸が止まりかける。


(……ロード)

振り向かない。

振り向けば引き込まれる。

本能がそう告げていた。

ただ、“後ろにいる”という感覚だけが、異様なほど鮮明だった。

その間にも、前方の空気が変わる。


「行きます」

アレンの低い声。

次の瞬間。

ティキの姿がぶれた。

距離が消える。


ガギィィィン!!

衝突音が遅れて弾ける。

白と黒の軌跡が交差し、床が軋む。

空気が裂けた。

アレンとティキの戦闘が、一気に始まる。


だが。

ラビは動けなかった。

いや。

背後の“もう一つ”の気配が、逃がしてくれない。


「ティッキーもねぇ、アレンが好きなんだよ」

くすくすと笑う声。

すぐ後ろに重なる。

軽く。
楽しげに。


「邪魔しなーいで♪」

空間が、わずかに歪む。

退路が削られていく感覚。


「ボクと遊ぼー♪――ブックマン」

最後の呼び方だけが、妙に重かった。

ラビはゆっくり息を吐く。


逃げ場はない。

なら。

向き合うしかない。

視線を上げる。

目の前では、アレンとティキの打ち合いがさらに激しさを増していた。

白と黒が何度も衝突し、その余波だけで空気が震える。

その背後で。

別の戦場が、静かに口を開いていた。

ラビは鉄槌を握り直す。


「……上等」

低く呟く。

そして、一歩を踏み出した。
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