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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第40章 【第三十五話】インクの檻



ラビが踏み出した一歩の余韻を、ティキの笑みが静かに塗り替えた。

軽く肩をすくめるように歩み出た彼は、視線をアレンの左腕へ落とす。


「前に会った時、確かに壊したはずなんだけどな。その左腕のイノセンス」

軽い口調。

けれど、その奥には確かめるような冷たさが混じっていた。


アレンは引かない。

視線を逸らさず、わずかに左腕を上げる。


「壊せてなかったんでしょう」

静かな声。

「ここにあるんですから」

ティキが喉の奥で小さく笑った。


「へぇ……」

目が細くなる。


「じゃあ、ティーズに心臓喰われても生きてたのは、その左腕のおかげってわけ?」

その一言で。

空気が変わる。



リナリーが息を呑む。

ラビの思考が、一拍遅れて追いついた。


(……心臓を、喰われた?)

聞いていない。

そんな話、一度も。


だがアレンは否定しない。

沈黙のまま立っているその姿が、何よりの答えだった。


ラビの胸の奥に、別の違和感が浮かぶ。

リナリー。
アレン。

どちらも、イノセンスに“救われている”。

適合者という枠を超えた、異常な現象。


(……異例が二つ)

その意味へ触れかけた瞬間。

声が落ちた。


「――記録したぁ? ブックマン?」

ぞわり、と背筋が粟立つ。
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