第39章 【第三十四話】約束を守るために
それなのに、自分は進むしかなかった。
「……まだ、決まったわけじゃありません」
アレンの声が、背後から聞こえた。
苦しげで、それでも必死に落ち着かせようとする声。
「必ず、戻ってきます」
ラビは、すぐには答えられなかった。
信じたい。
信じなければ、立っていられない。
けれど、胸の奥へこびりついた恐怖が消えない。
しばらくして、ラビは震える手で鉄槌を下ろした。
「……行くぞ」
低い声だった。
リナリーが驚いたように顔を上げる。
「ラビ……」
「ティファが戻ってくる場所を、なくすわけにはいかねぇだろ」
振り返らないまま、ラビは奥へ続く道を見る。
目の奥が痛い。
呼吸が、うまくできない。
それでも、進まなければならない。
ティファが約束を守って戻ってきた時、帰る場所が残っているように。
ラビは、閉ざされた霧の壁へ最後に一度だけ目を向けた。
「待ってろ、ティファ」
掠れた声が落ちる。
「絶対、迎えに行く」
そして、走り出した。