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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第39章 【第三十四話】約束を守るために



ティファは、震える指でクロスの外套を掴んだ。


「師匠……ヴェイン、を……知って……」

掠れた息を聞き取ったのか、クロスの動きが僅かに止まった。

銃を握る指が、ごく僅かに強張る。

けれど、すぐにティファを抱え直した。


「……ああ」

低い声が、頭上から落ちる。


「知ってる」

胸が冷えた。

問いかけたいことは、いくつもあった。


母のこと。
自分の歌のこと。
なぜ師匠がここにいるのか。

ヴェインが何を知り、何を望んでいるのか。


けれど、もう声が出ない。

視界の端で、崩れた霧が揺れる。

クロスは銃を片手に構えたまま、もう片方の腕でティファを抱き上げた。


「話は後だ」

煙草の匂いが、近くなる。


「今は生きて帰れ。待ってる馬鹿どもがいるんだろうが」

その言葉に、ぼやけた意識の中で、ラビの顔が浮かんだ。


――絶対、戻ってこいよ。

――約束、破んなよ。


戻らなければ。

そう思うのに、瞼が重い。

身体に力が入らない。


「……よく持ったな」

クロスの声が、ひどく遠くで聞こえた。

守られたのだと理解した途端、張り詰めていた意識が完全に途切れる。


煙草の匂い。
重たい外套の温度。

そして、最後に耳へ残ったのは、師匠の低い声だった。


「寝てろ、馬鹿弟子」

闇が、静かにすべてを呑み込んだ。
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