第39章 【第三十四話】約束を守るために
だが、見えない壁は砕けない。
逆に強い反動が腕へ走り、身体が僅かに弾かれた。
「っ……!」
「ラビ、やめてください!」
追いついたアレンが、腕を掴む。
「もう、そこは道じゃない! 空間ごと切り離されてるんです!」
「んなこと分かってるさ!」
ラビは、アレンの手を振り払う。
再び鉄槌を振り上げる。
「だからって、ここで黙って見てろって言うのかよ!」
二撃目。
三撃目。
見えない壁へ叩き込むたび、腕が痺れ、掌が裂けていく。
けれど、向こう側へは届かない。
白銀の光が、次第に弱くなる。
「……やめろ」
声が、震えた。
「消えんなよ……」
最後の光が、霧の向こうで微かに揺れる。
そして。
ふっと、途切れた。
「――っ」
ラビの呼吸が止まった。
何も聞こえない。
何も感じない。
さっきまで、あれほど強く溢れていたティファの気配が、突然消えた。
「……ティファ」
掠れた声が、白い壁へ落ちる。
返事はなかった。
ラビは、鉄槌を握ったまま動けなかった。
目の前には、もう開かない道。
向こう側にいるはずの、届かない人。
守りたかった。
今度は目の前にいたのに、手が届かなかった。
掴んだはずなのに、引き戻せなかった。