第39章 【第三十四話】約束を守るために
先頭を走るアレンの背中も、普段よりずっと強張っていた。
誰も、ティファを置いていきたかったわけではない。
方舟は崩れている。
先へ進まなければならない。
分かっている。
それでも。
「……ふざけんなよ」
掠れた声が、勝手に漏れた。
アレンが一瞬だけ振り返る。
「ラビ……」
「分かってるさ」
ラビは、吐き捨てるように言った。
「進まなきゃいけねぇのも、戻れねぇのも……分かってる」
拳が、震える。
「でも、納得できるわけねぇだろ……!」
最後に見たティファの顔が、脳裏へ焼きついている。
怖いはずなのに。
一人で残りたいはずなんてないのに。
それでも、ティファは笑った。
自分たちを行かせるために。
――約束する。
あの声が、耳から離れない。
ラビは歯を食いしばった。
「……破んなよ」
誰にも聞こえないほど小さく呟く。
「約束、破ったら……絶対許さねぇからな」
その時だった。
方舟全体が、激しく震えた。
「っ!?」
回廊の壁へ、白銀の光が走る。
霧の奥から、凄まじい圧が押し寄せてきた。
ラビの足が止まる。
「……ティファ?」