第39章 【第三十四話】約束を守るために
――絶対、戻ってこいよ。
――約束、破んなよ。
掠れた呼吸が漏れた。
戻ると答えた。
約束した。
なのに、身体はもう動かなかった。
光が遠ざかる。
音が消える。
意識が、深い闇へ沈んでいった。
一方、その頃。
白い回廊を、足音が激しく叩いていた。
ラビは何度も振り返りそうになる身体を、無理やり前へ向けて走っていた。
背後には、もうティファの姿は見えない。
霧が道を塞ぎ、崩れゆく方舟が、あの場所との繋がりを断ち切っていく。
「……クソ……!」
奥歯を噛み締める。
手のひらには、まだティファの腕を掴んだ感触が残っていた。
確かに触れていた。
あと少し、力を込めれば引き寄せられたような気がした。
けれど、空間がそれを許さなかった。
そして自分は、ティファを残したまま走っている。
「ラビ……」
チャオジーに背負われたリナリーの声が、震えていた。
ラビは答えなかった。
答えれば、立ち止まってしまいそうだった。