第39章 【第三十四話】約束を守るために
「……何を……」
掠れた声で問いかける。
けれど、ヴェインは答えなかった。
「次に会う時まで、君がまだ君でいることを願っているよ」
その輪郭が、完全に霧へ解ける。
声が消えた。
残ったのは、白銀の光と、崩れかけた空間だけだった。
静寂。
戦いは終わった。
そう思った瞬間。
喉へ、激痛が走った。
「っ……ぁ……!」
声が出ない。
息だけが、掠れて漏れる。
焼けるような痛み。
口の中へ広がる、濃い血の味。
最大解放の反動。
無理やり引き出した力の代償が、遅れて一気に押し寄せてくる。
膝が崩れた。
身体を支えられず、そのまま石畳へ倒れ込む。
視界が滲む。
指先から、感覚が抜けていく。
それでも、胸の奥に残っているのは、勝利の実感ではなかった。
――その歌は、いつか君を試す。
――君がまだ君でいることを願っている。
自分は、本当に、自分の意思で歌い続けられるのだろうか。
答えは、まだ分からなかった。
ぼやける視界の奥へ、ひとつの顔が浮かぶ。
ラビ。