第39章 【第三十四話】約束を守るために
巨大な光槍が、落下した。
轟音。
白銀の閃光が視界を塗り潰し、空間そのものが大きく震える。
霧が吹き飛ぶ。
石畳が砕ける。
時間の歪みが、光の中で引き裂かれていく。
衝撃が、全てを呑み込んだ。
やがて。
光が、少しずつ薄れていく。
崩れた霧の中。
ヴェインは、まだ立っていた。
光槍に輪郭ごと縫い止められ、巨大な一撃を受けたはずなのに、その身体から血は流れていない。
代わりに、輪郭そのものが霧へ溶けるように崩れ始めていた。
倒したのか。
退かせただけなのか。
そもそも、ここにいた彼が本物だったのか。
ティファには、何ひとつ分からなかった。
ヴェインは、崩れゆく姿のまま、ゆっくりと視線を上げる。
「……ティファ」
今度こそ、はっきりと名前を呼ばれた。
ティファは、僅かに目を見開く。
ヴェインは静かに笑っていた。
湖で見た時よりも、ずっと寂しい笑みだった。
「君は、本当に……優しいね」
霧へ溶けていく指先が、僅かに揺れる。
「だから、その歌は……いつか君を試す」