第39章 【第三十四話】約束を守るために
胸の奥が、強く跳ねた。
「……ラビを使って、私を揺さぶらないで」
「揺さぶる?」
ヴェインは静かに首を傾ける。
「いや。むしろ逆だよ。君が誰か一人に強く心を向けること――それが、君の力にとって何を意味するか。君は、まだ知らない」
喉元が、熱く脈打った。
どくん。
ティファは眉を寄せる。
「……どういう、意味?」
ヴェインは微笑んだ。
「覚えておくといい。君の願いは、いずれ歌の中へ混ざる。救いたいという想いも、失いたくないという想いも」
「……っ」
ニルヴァーナが、また脈打つ。
胸の奥へ、ラビの声が蘇った。
――絶対、戻ってこいよ。
――約束、破んなよ。
「聞くな」
まるで、あの場にいるように、ラビの声が耳の奥で響いた気がした。
ティファは、双剣を握る指へ力を込める。
「……私の心を、あなたが決めつけないで」
ヴェインの瞳が、僅かに揺れる。
「私は、自分で選ぶ」
「誰かを助けたいと思うのも」
一歩、踏み込む。
「誰かのもとへ帰りたいと思うのも」
ヴェインの目が、静かに細くなる。
「……そうか」
次の瞬間、空間が大きく歪んだ。
ティファの足元から、霧が一気に噴き上がる。
ヴェインの姿が消えた。