第39章 【第三十四話】約束を守るために
ティファは双剣を握り直した。
足元の石畳を踏みしめても、その感触が微かに遅れて届く。
自分の呼吸さえ、一拍遅れて身体へ戻ってくるような気持ち悪さ。
「この空間は、君には厳しいだろうね」
霧の向こうから、ヴェインの声が落ちる。
「まだ、境界に慣れていない」
「……境界?」
「壊れていく世界と、まだ繋ぎ止められている世界。その狭間だよ」
声が近づいた。
ティファは咄嗟に右へ身を捻る。
刃が頬の横を掠め、銀髪が数本、宙へ舞った。
そのまま左の刃を横薙ぎに払う。
空を切る。
直後、腹部へ強い衝撃が入った。
「っ、ぁ……!」
蹴り飛ばされ、背中から床へ叩きつけられる。
肺の空気が一気に抜けた。
「君は、自分の歌を理解していない」
ヴェインは、倒れたティファを見下ろしていた。
「なのに、それを迷いなく使う」
ティファは痛む身体を起こし、再び刃を構える。
「……あなたに、何が分かるの」
「分かるよ」
ヴェインの瞳が、僅かに細くなる。
「同じ血を持つ者ならね」
その言葉だけで、胸がざわつく。