第39章 【第三十四話】約束を守るために
誰かを助けたいと思うたびに、誰かが自分を必要とする。
救えるなら、歌ってほしいと願われる。
その願いが、いつか鎖になるのだとしたら。
けれど。
ティファは、ゆっくりと息を吸った。
「……分からないわ」
ヴェインの瞳が、僅かに細くなる。
「誰かが私を必要としてくれるなら、応えたいと思う。救えるなら、手を伸ばしたいと思う」
喉元で、ニルヴァーナが熱を帯びる。
「でも……それだけが、私の全部になるとは思わない」
声は震えていた。
けれど、ティファは目を逸らさなかった。
「私には、名前を呼んでくれる人たちがいる。歌わなくても、救えなくても、私を私として見てくれる人たちがいる」
そして、胸の奥に浮かんだのは、最後まで手を離そうとしなかった翠の瞳だった。
「少なくとも、ラビは……私が救いを与え続けることなんて望まない」
「あの人は、私が歌えなくなっても、私を呼ぶわ」
ヴェインの表情が、わずかに揺れた。
「……あの少年か」
「ええ」
ティファは、真っ直ぐにヴェインを見る。
「私は、救いとして戻るんじゃない」
「約束を守るために戻るの」