第39章 【第三十四話】約束を守るために
ヴェインが、静かに目を細める。
「……彼らを行かせたんだね」
ティファは答えなかった。
そして、喉元へ意識を集めた。
白銀の光が両手の中へ集まり、細く鋭い二振りのレイピアが静かに姿を現す。
その刃先が、白い霧を鋭く切り裂いた。
「そこを退いて」
ヴェインが、僅かに眉を上げる。
「僕を越えて、彼らのもとへ行くつもりかい?」
「当たり前でしょう」
ティファは、真っ直ぐヴェインを見据えた。
「私は、あなたと話をするためにここへ残ったんじゃない」
喉の奥で、ニルヴァーナが不気味に熱を帯びる。
「皆に追いつく。そのために、あなたを越える」
ヴェインは、しばらく黙ってティファを見ていた。
やがて、どこか寂しそうに薄く笑う。
「君は本当に、そちらへ戻るつもりなんだね」
ヴェインの声は静かだった。
「君の母親が逃げ出した場所へ、それでも戻るつもりなんだね」
胸が、冷たく沈んだ。
「今なら、はっきり言える」
ヴェインの瞳が細くなる。
「ティファ。こちらへ来い」
その言葉に、空気が止まった。
「……何を」
「教団は君を救わない。君の歌を求めるだけだ」
ヴェインは、一歩近づいた。
「僕の母は、そうして奪われた」