第39章 【第三十四話】約束を守るために
「絶対、戻ってこいよ」
掠れた声。
命令のようでいて、祈るようだった。
「約束、破んなよ」
ティファは、ゆっくり頷いた。
「ええ」
声が震えないように、強く息を吸う。
「約束する」
その言葉が届いた直後、アレンがラビの肩を強く引いた。
「行こう、ラビ!」
「……っ、クソ……!」
ラビは最後まで、ティファから目を逸らさなかった。
けれど、崩れていく方舟の奥へ、その姿は少しずつ遠ざかっていく。
リナリーが、涙を堪えるように叫んだ。
「ティファ……絶対、戻ってきて……!」
チャオジーも、リナリーを背負ったまま声を震わせた。
「ティファさん……必ず、追いついてください」
何も出来ない悔しさを噛み殺すような声だった。
「ええ」
ティファは、霧の向こうへ微笑んでみせた。
「必ず、追いつくわ」
白銀の光が、最後にひときわ強く輝いた。
仲間たちの進む道を守るように。
そして、霧が濃くなる。
通路が途切れる。
最後に見えたのは、振り返りながらこちらを見つめる、ラビの翠の瞳だった。
やがて、その姿も白い霧の向こうへ消えた。
静寂が落ちる。
残されたのは、ティファとヴェインだけだった。