第39章 【第三十四話】約束を守るために
すぐそこにいるのに、届かない。
同じ場所に立っているはずなのに、互いの時間だけが噛み合っていないみたいだった。
「……前にも、あったわ」
雨に濡れた遊園地。
音が途中で消え、見えている距離と実際の位置が噛み合わなかった場所。
あの時と同じ違和感が、今、方舟の崩れかけた空間の中で濃くなっている。
ヴェインが、静かに目を細めた。
「思い出した?」
「テメェが仕組んだのか」
ラビが低く唸る。
「この方舟は、もう崩れかけている。空間も、時間も、輪郭を保てていない」
白い霧が、ティファと仲間たちの間をゆっくりと満たしていく。
「僕はそこへ、少し手を添えただけだ」
「ふざけんな……!」
ラビは、空いた手を霧の壁へ叩きつけた。
けれど、壁は水面のように歪むだけで、砕けない。
ティファとの距離は、縮まらない。
繋がっているのは、今にも解けそうな指先だけだった。
ヴェインの視線が、ティファの喉元へ落ちる。
「魂を導く歌は、消えゆくものの境界へ触れる」
どくん、とニルヴァーナが脈打つ。
「だから、君は引っかかる」
ティファは喉元を押さえた。
「私の力を……利用したの……?」