第39章 【第三十四話】約束を守るために
焦りを押し殺した声。
「ここで足を止めるわけにはいかない。先へ進ませるために残ってくれた人たちの覚悟まで、無駄になる」
リナリーが唇を噛む。
「でも、この人を放って進むなんて……」
その瞬間だった。
喉の奥で、ニルヴァーナが強く脈打った。
どくん――。
「っ……!」
焼けるような熱が、喉から胸へ走る。
同時に、ティファの足元から白銀の光が迸った。
細い光の線が石畳を這い、ティファとヴェインの周囲だけを囲むように円を描く。
霧が、一気に立ち上がった。
まるで壁のように。
「ティファ!」
ラビが咄嗟にティファの腕を掴んだ。
その手の熱は確かにある。
けれど、触れられた感覚が、一拍遅れて届いた。
「……ラビ?」
目の前にいるはずのラビの輪郭が、霧の向こうで不自然に揺れる。
すぐ隣にいる。
なのに、何かが噛み合っていない。
ラビの手が、ティファの腕を引き寄せようとする。
けれど、その力は途中で歪んだ。
掴まれていたはずの手首から、感触がすり抜けていく。
腕から、掌へ。
掌から、指先へ。
「っ、何だよこれ……!」
ラビが声を荒げる。
ティファも反射的に、消えかけるその手を握り返した。
けれど、指先が触れているだけだった。