第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
「ティファ、少し腕を上げてもらっていい?」
ジョニーの声に、私は我に返る。
「ええ」
指示に従って腕を上げると、彼は肩幅から腕の長さまで、慎重に測っていった。
その隣の作業机には、何枚もの紙と黒い布見本、銀糸の束が広げられている。
紙の上へ描かれているのは、これから私が纏う団服の構想だった。
黒を基調とした、身体に沿う細身の上衣。
首元まで閉じた高い襟には、喉の動きを妨げないよう、僅かな余裕が設けられている。
肩には、動きの邪魔にならない大きさの銀色の装甲。
襟元から胸、そして腰へかけては、縦に落ちる銀の縁取りが、黒の中へ一筋の光を通すように走っていた。
左胸には、銀色の紋章を配する案が描き込まれている。
腰回りには、身体を支える黒と銀のベルト。揺れを抑えるための細い鎖飾りは、装飾でありながら、長い裾を乱れにくくする役目も兼ねているらしい。
下衣は、激しく足を踏み込んでも妨げにならない短いパンツを内側に仕込み、その上から、正面を開いた長い布地を重ねる形になっていた。
立っている時には、足元まで流れる端正な長衣に見える。
けれど、刃を構え、踏み込み、身体を翻した時には、脚の動きを少しも妨げない。
膝上までを覆う黒の靴下と、足元を安定させるロングブーツ。
手元には、戦場で指先を傷めないための黒い手袋。
華美ではない。
けれど、祈りのための静けさと、戦うための鋭さが、同じ黒の中に息づいているように見えた。