第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
けれど、その視線は一瞬だけ、神田の髪を結んだ細い紐へ落ちた。
ティファもリナリーの傍へ座り込み、額へそっと触れる。
「……頑張ったわね」
掠れた声。
その横で、アレンが静かに周囲を見回していた。
仲間達の無事を、一人ずつ確認するみたいに。
瓦礫だらけの河岸。
崩れた石橋の下へ、辛うじて生き残った者たちが身を寄せ合っていた。
夜風が冷たい。
遠くでは、未だ燃え続ける江戸の火が赤く揺れている。
ティエドール元帥は静かに周囲を見回した。
横たわるリナリー。
疲弊し切ったミランダ。
怪我だらけのチャオジー達。
そして、未だ呼吸の荒いエクソシスト達。
元帥は重く息を吐く。
「…AKUMA生成工場」
低い声が落ちる。
「ノアの方舟ねぇ……」
ブックマンが目を細めた。
「あの男に協力する気は、さらさら無いんだがな」
神田は少し離れた場所で壁にもたれたまま、無言で六幻を抱えている。
ラビはその隣へ腰を下ろし、額の汗を拭った。
ティファは、未だ目を覚まさないリナリーの傍から離れられずにいた。
その時。
ティエドールが静かに口を開く。