第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
その中心――
結晶化したイノセンスに守られたリナリーの前で、伯爵の巨大な腕を止めた白銀の右腕。
神ノ道化。
その腕を掲げ、アレンが静かに立っていた。
伯爵の丸い眼が細められる。
「――その姿……♡」
愉悦を滲ませた声が響く。
「まるで、“愚かな道化”を追い回す“白い道化”のようじゃないですカ♡」
巨大な身体が揺れる。
「滑稽な子供ですネェ……♡」
アレンの銀灰色の瞳が鋭く細まった。
次の瞬間。
神ノ道化が白く閃く。
轟音。
伯爵が跳躍し、白いマントが空を裂いた。
「ハハッ♡ 怖い怖い♡」
「逃がしません!!」
アレンが追う。
瓦礫を蹴り、崩壊した街を疾走する。
その途中。
ふいに、視界の端へ見慣れた赤茶色が映った。
「――ラビ!?」
アレンが地面へ降り立つ。
ラビは傷だらけのまま鉄槌を肩に担ぎ、こちらを見開いた。
「アレン!? お前、生きて――」
「伯爵がこっちに来ませんでした――」
そこまで言った瞬間だった。
「まちやがれコラァァ!! 死ねェ!!」
殺気。
「うわっ!?」
咄嗟にアレンが振り返る。