第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
掠れた声だった。
「ブックマンと……クロウリーさんを……上まで……連れていってくれて……」
ティファの息が止まる。
さっきの閃光。
夜空で弾けた黒い影。
その意味が、胸の奥でようやく繋がった。
「最後まで……守ってくれて……」
ミランダの瞳から、涙が零れ落ちる。
声が、それ以上続かなかった。
ティファは何も言えなかった。
喉の奥が詰まる。
けれど、泣いている暇はない。
ミランダの時計盤は、まだ震えながら光を保っている。
「……無駄にしないわ」
掠れた声で呟く。
その間にも、神田は迷わず突っ込んでいた。
「離せ」
低い声。
六幻が閃く。
ティキが後退した一瞬の隙に、神田がリナリーの身体を引き離す。
「おい、受け取れ!」
「おっと!?」
ラビが慌ててリナリーを受け止めた。
その直後。
上空で、融合AKUMAが咆哮を上げる。
「マリ!」
無数のワイヤーが夜空を走った。
マリのイノセンス――《聖人ノ詩篇――ノエル・オルガノン》
嘆きの旋律が、巨大AKUMAの全身へ巻き付く。
巨体が拘束された。
神田が六幻を構える。
ラビが青ざめる。
「ユウ! そいつ、めっちゃ硬ぇぞ!?」