第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
その負担が、今になって一気に身体へ押し寄せている。
「だ、大丈夫……まだ……」
そう言いながらも、声は震えていた。
時計盤を握る指先にも、もう力が入っていない。
それでも、ミランダは倒れまいと歯を食いしばった。
その時。
視界の端で、影が大きく揺れた。
ティファはティキの拳を受け流しながら、ほんの一瞬だけそちらを見る。
誰かの声が聞こえた。
「……オイラが、運ぶっちょ」
崩壊音に紛れて、途切れ途切れに届いた声。
ちょめ助の声だった。
「上からじゃないと……効かないなら……」
「ちょめ助……!」
リナリーの悲鳴にも似た声が重なる。
けれど、何が起きているのか確かめる暇はなかった。
「よそ見?」
ティキの声が、すぐ近くで落ちる。
「!」
ティファは咄嗟にレイピアを交差させる。
拳と刃がぶつかり、火花が散った。
その直後。
夜空の上で、眩い閃光が弾けた。
轟音。
衝撃が屋根を揺らし、瓦礫が雨のように降り注ぐ。
「……っ!」
ティファは踏み止まりながら、奥歯を噛み締めた。
何が起きたのか。
誰が、何をしたのか。
分からない。
けれど、遠くで誰かが叫ぶ声だけが、胸の奥へ嫌な予感を残した。