第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
「……あれが」
リナリーが息を呑む。
「千年伯爵……私たちの宿敵」
チャオジーは顔色を失い、膝をつきそうになっていた。
「む、無理ですよ……あんなの……」
クロウリーも唇を引き結んでいる。
ラビが鉄槌を握った。
その横で、ティファもレイピアを顕現させる。
喉元で、ニルヴァーナが鋭く脈打った。
「……やるさ」
ラビの声に、いつもの軽さはなかった。
「……ええ」
ティファは伯爵を見据えた。
「ここで止めるわ」
次の瞬間、二人は同時に攻撃を放った。
「火判!!」
巨大な炎が夜空を裂く。
「光槍――ルミナ・ランス」
白銀の槍が、黒い塊の中心へ降り注いだ。
完全な奇襲。
――のはずだった。
「アハハハハ!!」
伯爵の笑い声が響く。
「その程度、元帥の攻撃ではありませんネ。隠れていないで出てきなさイ、ネズミ共♡」
炎も光槍も、届く寸前で黒い闇へ呑み込まれていく。
「っ!」
ティファは空中で身を捻り、近くの屋根へ着地した。
ラビも鉄槌を支えに、瓦を砕きながら踏み止まる。
ブックマンが声を張った。
「元帥の元へは行かせんぞ、伯爵!」