第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
その言葉に、リナリーが反応した。
「待って……」
掠れた声。
「伯爵の元って、まさか……」
ちょめ助は、苦しげに頷いた。
「江戸帝都に……今……」
言葉が落ちる。
「千年伯爵様が、来てるっちょ」
空気が凍った。
誰も、すぐには動けなかった。
千年伯爵。
その名だけで、肌が粟立つ。
ティファは石段の先を見上げる。
闇の奥。
江戸帝都。
そこに、AKUMA達が集まり始めている。
そして、その中心に――千年伯爵がいる。
ラビが鉄槌を握り直した。
「……最悪さ」
ブックマンも静かに目を細める。
「急ぐぞ。状況は想像以上に悪い」
ティファは小さく頷いた。
喉の奥で、ニルヴァーナが低く脈打つ。
怖い。
けれど、足は止まらなかった。
一行は、江戸へ続く闇の中へ、さらに足を踏み入れた。
江戸城を見下ろす屋根の上。
黒く脈打つ巨大な塊の中心で、伯爵が愉快そうに笑っていた。
その周囲には、ティキ・ミック、スキン・ボリック、ジャスデビ、そして無数のAKUMA。
夜空を覆うように広がる黒い影は、まるで江戸そのものを呑み込もうとしているようだった。