第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
リナリーが、チャオジーの背で顔を上げる。
ちょめ助は歯を食いしばるようにして、震える声を絞り出した。
「日本中のAKUMAに……命令が出てるっちょ……」
「内容は?」
ブックマンが低く問う。
ちょめ助の目が、ぐらりと揺れた。
「江戸へ……集まれって……」
一瞬、風の音だけが残った。
「日本にいる全てのAKUMAを……江戸へ呼び集めてるっちょ……!」
ラビの表情が強張る。
「全部だと……?」
「そんな……」
ミランダが青ざめる。
クロウリーも、石段の先を見上げたまま息を呑んだ。
「つまり、我々はAKUMAの巣へ向かっているということであるか……」
ちょめ助は頭を押さえたまま、苦しそうに身体を丸める。
「オイラは……マリアンに改造されてるから……伯爵様の命令に逆らえるはずなんだっちょ……」
声が震える。
「でも……今回の送信は……強すぎるっちょ……」
まるで、見えない糸で引かれているみたいだった。
ちょめ助の身体が、一歩、江戸の方へ傾く。
ラビが即座に腕を伸ばした。
「おい、ちょめ助!」
「ごめんちょ……ラビ……」
ちょめ助は泣きそうな顔で振り返った。
「オイラ……伯爵様の元へ……行かなきゃ……」