第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
「いいえ」
リナリーが静かに遮った。
弱い声だった。
けれど、はっきりしていた。
「命を使うなんて言わないで。皆で生き残って、帰りましょう」
チャオジーが息を呑む。
マオサも、キエも、黙ってリナリーを見つめた。
やがてチャオジーは、ゆっくり頷く。
「……はい。皆で、帰りましょう」
レベル3達の気配が、闇の奥へ遠ざかっていく。
ちょめ助が小さく息を吐いた。
「今のうちだっちょ」
一行は、再び石段の先を見上げる。
江戸は、想像以上に危険な場所だった。
それでも、ここまで来て引き返す者はいない。
ティファは喉元へ手を添え、静かに息を吸った。
「行きましょう」
誰も反対しなかった。
一行は、鳥居の奥へ続く闇の中へ足を踏み入れた。
鳥居をくぐった、その時だった。
「……っ」
ちょめ助が、突然頭を押さえた。
「ちょめ助?」
ラビが振り返る。
ちょめ助の身体が、小刻みに震えていた。
「来た……っちょ……」
苦しげな声。
「伯爵様からの……命令送信……」
その言葉に、全員の顔色が変わった。
ティファは不安げに呟いた。
「命令……?」