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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第36章 【第三十一話】命を繋ぐ海


アニタの指先が、そっとティファの手へ触れる。


「だから、どうか」

雨の音に混じって、彼女の声が落ちる。


「あなたは、生きてね」

その意味を理解した瞬間、リナリーの顔色が変わった。


「待って……!」

リナリーが手を伸ばす。


「アニタさん!!」

アニタは、ただ微笑んだ。


「さようなら」
「そんな……そんなの、嫌です!!」

リナリーの悲鳴が、雨の中に響いた。

ミランダが震える手でタイムレコードを抱き締める。


「ごめんなさい……っ」

声が潰れていた。


「ごめんなさい……!」

時計盤の光が揺らぐ。

次の瞬間。

時間が、戻った。


「――ッ!」

甲板の空気が軋む。
船体が悲鳴を上げる。

同時に、アニタ達の身体へ黒い痣が広がっていった。

AKUMA弾の毒。

本来なら、もうとっくに彼女達を奪っていたはずの死が、現実の時間に戻ってくる。

リナリーが叫ぶ。


「アニタさん!!」

マホジャも。
船内で笑っていた者達も。

次々と身体を崩していく。

塵となって。
白い灰となって。

風へ溶けるように。


それでも、誰一人として泣き叫ばなかった。


最後まで。

穏やかに笑っていた。

穏やかすぎるほどに。

ティファは、その光景から目を逸らせなかった。
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