第4章 【第三話】檻と家のはじまり
「お、朝から美人二人で密談?」
聞き覚えのある軽快な声が降ってくる。
顔を上げる。
トレーを片手にしたラビが、当然のようにこちらへ近付いてきていた。
その隣には、長い黒髪の青年がいる。
鋭い眼差し。
周囲の喧騒など眼中にない様子で、彼は無言のまま近くの席へ腰を下ろした。
昨夜、鍛錬場で刀を振るっていた青年だった。
「おはよう、 ティファ。ちゃんと眠れたさ?」
「おはよう、ラビ。ええ、おかげさまで」
「昨日より警戒されてない気がする。これは好感度上がったってこと?」
「食堂へ案内してくれたことには、感謝しているわ」
「また限定つき!?」
ラビが大袈裟に嘆く。
その横で、黒髪の青年が苛立たしそうに舌打ちをした。
「朝から騒ぐな、バカ兎」
「相変わらず冷てぇなぁ、ユウ」
青年の箸が、ぴたりと止まる。
「……その名で呼ぶなと言っただろうが」
低く、鋭い声。
その声を聞いた瞬間、昨日鍛錬場で感じた、あの張り詰めた響きが胸の奥を掠めた。
冷たいだけではない。
何かを押し殺すように、軋み続けている音。
私は無意識に背筋を伸ばした。
けれど、目を逸らす理由にはならなかった。
「 ティファ、こいつ神田ユウ。態度は最悪だけど、腕は確かさ」
ラビがひらひらと手を振りながら紹介する。
「殺すぞ、バカ兎」
リナリーが困ったように溜息を吐いた。
「もう、朝から喧嘩しないの。 ティファ、神田は私たちと同じ、エクソシストなの」