• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第36章 【第三十一話】命を繋ぐ海



リナリーの瞳に、じわりと涙が滲んだ。


「わたし……まだ……世界の中にいる……?」

その言葉に、胸が締め付けられる。


リナリーは、戻ってきたのだ。

死の淵から。
自分のイノセンスに守られて。

それでも、まだ生きている実感さえ掴めないほど遠い場所から。

ラビはリナリーの身体を支え直し、きつく奥歯を噛んだ。


「馬鹿ヤロー……っ」

低く震えた声。

怒っているようで、泣き出しそうな声だった。

ティファも、握った手に力を込める。


「よく戻ってきてくれたわね」

喉の奥が詰まる。


「本当に……よく頑張った」

リナリーの涙が、頬を伝って落ちた。

けれど、その表情には、少しずつ意識が戻ってきていた。



しばらくして。

リナリーは、まだ震える身体を起こそうとした。


「リナリー、無理すんなさ」

ラビが支える。

けれどリナリーは、小さく首を横へ振った。


「……進もう」

その声は弱かった。

けれど、はっきりしていた。

甲板にいた者達が、一斉にリナリーを見る。


「ここで戻るなんて、出来ない」

リナリーは、ゆっくり言葉を紡いだ。


「ここまで私達を運んでくれた人達がいる。道を作ってくれた人達がいる」

その瞳が、壊れた船と、傷付いた船員達を映す。


「戻ったら、その人達の命まで、なかったことにしてしまう」


沈黙が落ちた。

重い沈黙だった。
/ 972ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp