第36章 【第三十一話】命を繋ぐ海
「ちょ、待つっちょ! 盗らねェって!」
改造AKUMAは慌てたように両手を上げた。
「オイラ、お前らの味方だっちょ!」
「んなすぐ信用できっか!」
ラビの声が鋭くなる。
「クロス元帥の遣いだと? AKUMAが? ティファだってそんな話、知らねぇって言ってるんさ!」
その言葉に、ティファは僅かに唇を噛んだ。
確かに知らなかった。
師匠がAKUMAを改造出来るなど、一度も聞かされていない。
あの人なら、何をしていてもおかしくはない。
そう思う一方で、知らされていなかった事実が、胸の奥に小さな棘みたいに刺さった。
「ラビ」
ブックマンが低く言う。
「警戒を解け」
「じじい!?」
「クロス・マリアンは、AKUMAを改造出来る唯一の人物じゃ」
ブックマンの視線が、改造AKUMAへ向けられる。
「このことを知っている者は、教団の中でもほとんどおらん。ワシが知っているだけだ」
ティファは息を詰めた。
ブックマンがそう言うなら、嘘ではないのだろう。
けれど、胸のざわつきは消えなかった。
改造AKUMAは、少しだけ肩を落としたように見えた。
「時間がないっちょ」
その声から、先ほどまでの軽さが僅かに消える。