第35章 【第三十話】紅い雪の降る海
木判が、夜空へ轟く。
分厚い雲が裂けた。
そして。
雲の上に潜んでいたレベル2達が、ついに姿を現す。
「クロちゃぁぁぁん!!」
「了解した!!」
巨大化した鉄槌が、クロウリーを上空へ打ち上げた。
ごぉっ!!
凄まじい勢いで、クロウリーの身体が夜空へ吹き上がる。
レベル2達が反応するより早く。
クロウリーは、一体の首元へ噛み付いた。
牙が深く食い込む。
そして、自らの口内を裂くように噛み切った。
血。
クロウリー自身の血が、AKUMAの体内へ流れ込む。
次の瞬間。
「ギ、ァァァァァァァ!!?」
レベル2が絶叫した。
イノセンスに侵された身体が、内側からひび割れていく。
爆散。
「ククククク!!」
クロウリーは空中を駆け回る。
次々とAKUMAへ噛み付き、自らの血を流し込み、破壊していく。
まるで本物の吸血鬼だった。
その間も、ティファはミランダの前に立ち続けた。
飛来する砲撃を、レイピアで受け止める。
銀光。
轟音。
衝撃が腕へ響く。
ニルヴァーナが熱を帯びる。
それでも、歌は止めない。
恐怖で崩れそうになる船員達を、繋ぎ止めるために。
やがて、最後の一体が爆散した。
空から、赤い雪のようなものが降ってくる。
「紅い、雪……?」
ミランダが呆然と呟いた。
クロウリーが甲板へ降り立つ。
「終わったのであ――」
その声が、途中で途切れた。
ふらり。
クロウリーの身体が力なく傾く。
「クロウリー!!」
ティファは咄嗟に駆け寄った。
「AKUMAの血、飲んでこなかったの……!?」
思わず叫ぶ。
クロウリーは床へ転がったまま、死にそうな声で反論した。
「だっ、黙れ……」