• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第35章 【第三十話】紅い雪の降る海



守りきれなかった。

そう思いかけた瞬間、船員が顔だけをこちらへ向ける。


「歌、止めんなよ……嬢ちゃん」

その言葉に、ティファは息を呑む。

喉の奥が、焼けるように震えた。

泣く暇などない。
迷う暇もない。

ティファは奥歯を噛み締め、レイピアを握る手に力を込めた。

背後には、ミランダがいる。
アニタの船員達がいる。

そして、まだ生きようとしている者達がいる。

その瞬間。

ニルヴァーナが熱を帯びた。


――歌え。

ティファは息を吸う。

そして、静かに歌い始めた。

透き通る旋律が、砲撃音の隙間へ溶け込んでいく。

荒れていた呼吸が、少しずつ整っていく。
震えていた肩が止まる。

誰かが、呆然と呟いた。


「……まだ、動ける……」

その声につられるように、別の船員が顔を上げる。

恐怖で竦んでいた足が、もう一度甲板を踏み締めた。


歌は、心へ染み込むように船上へ広がっていく。

壊れかけた船を。
怯える者達を。

それでも前へ進もうとする命を、繋ぎ止めるように。

アニタが舵を取り、叫んだ。


「総員聞けェ!! エンジン全開!無事な者は動力炉へ! AKUMA弾を受けた者も、タイムレコードが効いている間はまだ動ける! なら、最後まで船を守りなさい! 舵は私が取る!」

その背後から、マホジャも舵へ手を掛けた。


「主の細腕だけでは、この舵は重い」
「助かるわ、マホジャ!」

「[[rb:天針 > ヘブンコンパス]]、加護の針″[[rb:東ノ罪 > イーストクライム]]″」

ブックマンが掠れた声で叫ぶ。

無数の針が放たれ、巨大な時計盤を覆うように突き刺さった。
/ 890ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp