第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
その言葉が落ちた瞬間だった。
リナリーの身体の下。
黒い星形の紋様が、一瞬だけ浮かび上がる。
「――!?」
誰かが反応するより早く。
ゴボッ――!!
地面が裂けた。
「きゃっ――!?」
リナリーの身体が、一気に沈む。
本当に、一瞬だった。
ティエドールが顔色を変える。
「――狙いはリーだ!!」
叫ぶ。
「いかん!! 止めろォォ!!」
だが、間に合わない。
「リナリー!!」
アレンが条件反射で飛び込む。
「アレン!!」
ティファも反射的に駆け出していた。
ラビが手を伸ばす。
けれど、ティファの身体はすでに黒い穴へ落ちていた。
「くそっ!」
ラビも迷わず飛び込む。
神田も舌打ちしながら続いた。
「チッ!」
そして、クロウリーも。
チャオジーも顔を青ざめさせながら飛び込んだ。
「エクソシスト様!!」
次の瞬間。
ズブリ――
全員の姿が黒い穴の中へ呑み込まれる。
そして。
穴は何事もなかったみたいに閉じた。
静寂。
取り残されたのは。
ティエドール。
ミランダ。
マリ。
ブックマン。
そしてキエとマオサの、船員二人だけだった。
誰もすぐには動けない。
ミランダが震える声で呟く。
「い、今の……何……?」
マリは険しい顔のまま、黒い穴が消えた地面を見つめていた。
「……音が、消えた」
ティエドールは苦しげに歯を食いしばっていた。