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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第35章 【第三十話】紅い雪の降る海



次の瞬間、彼女は鉄槌を蹴り台にするように駆け上がった。

風が裂ける。
黒い髪が翻る。

リナリーはそのまま空へ飛び上がり、レベル3を追う。

ティファは息を呑み、その背中を見上げた。


「リナリー!」

リナリーは振り返らなかった。

ただ、空中で叫ぶ。


「船に戻って、ラビ!!」

その声は、震えていなかった。

ラビはブックマンを抱えたまま、歯を食いしばる。

追いたいのだと分かった。


けれど、腕の中のブックマンは血に濡れている。

「……くそっ!」

ラビは叫ぶように息を吐き、鉄槌の柄を強く握り締めた。


ティファも立ち上がる。

レイピアの光が、両手に形を成していく。

上空では、リナリーが黒い軌跡を描きながら、レベル3へ向かっていた。

リナリーの声が、夜空へ響いた。

黒い髪を翻しながら、彼女は単身でレベル3へ突っ込んでいく。


「そいつはレベル3だ!!一人で戦うな、リナリー!!」

ラビの叫びは、爆音に掻き消された。

それでも、リナリーは振り返らない。

空中で黒い靴を輝かせたまま、まっすぐレベル3を見据えていた。


「ラビ、私はもう大丈夫」

その声は、風の中でもはっきり届いた。


「先に戻って。船を守って!」

その時。


「……ラビ……」

腕の中で、ブックマンが血を吐いた。


「じじい!」

ラビの顔色が変わる。

ブックマンは震える指で、雲の上を指した。


「船へ……戻れ……」

掠れた声。


「あやつだけじゃない……雲の上に……何体か、おる……」

嫌な沈黙が落ちた。
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